讃美歌データベースを用いたベイジアンネット ワークによる自動和声付けの研究

Main Author: 鈴木峻平
Format: info publication-thesis Journal
Bahasa: jpn
Terbitan: , 2014
Subjects:
Online Access: https://zenodo.org/record/6215522
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  • 音楽の自動生成の分野において、与えられた主旋律にコード進行などを付与す る和声付けは、主要な課題のひとつである。更に、和声付けの自動化は、作曲支援 だけでなく、音楽理論をモデル化するという重要な課題でもある。その中で、四 声体和声付けは様々な研究がされてきた。これらの研究の古くはエキスパートシ ステムなどのルールベースのアプローチがとられてきた。しかし、後述する音楽 的同時性と音楽的連続性を両立する網羅的なルールセットを設計するのは難しく、 近年では、隠れマルコフモデルやベイジアンネットワークなどの機械学習を用い ることが一般的である。 本研究では、確率推論に基づいた機械学習技術の一種であるベイジアンネット ワークを用いた四声体和声の自動生成について検討する。ベイジアンネットワーク を用いる際に最も重要な課題は、モデル (ベイジアンネットワークを構成するノー ドとアークの集合をさす) をどのように設計するかである。この設計を行う上で、 主に 2 点の留意点がある。ひとつは音楽的同時性と音楽的連続性を両立すること、 もうひとつは和音の適切な粒度で表現することである。 「音楽的同時性と音楽的連続性の両立」とは、楽譜における縦と横の関係の依 存関係をともに考慮することをさす。ここで、音楽的同時性とは同時になるいく つかの音において、声部間の協和な関係を保つこと、音楽的連続性とは声部内で 滑らか旋律を作りだすことをいう。この 2 つの片方が欠けると音楽的に不適切な 和声になる。 「和音の適切な粒度による表現」とは、学習データが有限であることを前提に、有限のデータで学習可能な程度の粒度で和音を表すことである。和音を表す上で、 最もよく用いられるのがコードネームである。コードネームは表現能力の高い表 記方法として広く知られているが、ヴォイシングやテンションノート、ベース音を 区別して記述すると数万種類になってしまい、有限のデータから出現確率を学習 することは困難である。これらの区別を行わなければコードネームの種類が大幅 に減らすことできるが、これらを区別せずに音楽的に適切な和声を生成すること は困難である。 本研究では、ベイジアンネットワークを次のように設計することで、これらの 問題を解決する。前者の問題に対しては、音楽的同時性と音楽的連続性をそれぞ れ適切なノード間のアークとして表現し、全体の確率が最大となる和声を推定す る。後者の問題に対しては、コードシンボルを含まないモデルを設計する。コー ドシンボルを考慮せずに、4 声部間のみの関係を考慮することで、コードシンボル の曖昧性の問題を解決し、適切な和音を推論することができる。 このモデルの有効性を確かめるために、比較対象としてコードシンボルを含め たモデルを作成し、コードシンボルを含めないモデルとの結果の比較を行った。評 価には、音楽的同時性と音楽的連続性の観点から客観評価と主観評価を用いて行っ た。結果として、コードシンボルを含めないモデルの結果で不協和音がわずかに 多くなってしまったが、コードシンボルを含まないモデルの結果の方が、豊富な 和音の種類の出現や、各声部の旋律やコード進行が滑らかになるなど、音楽的連 続性の観点において多くの点で優れていた。