スマートタンバリンを用いた複数人でのカラオ ケ支援システム

Main Author: 栗原拓也
Format: info publication-thesis Journal
Bahasa: jpn
Terbitan: , 2017
Subjects:
Online Access: https://zenodo.org/record/6214731
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  • カラオケは娯楽の 1 つとして広く根付いている.カラオケを楽しむ理由はいく つか考えられるが,仲間同士の親睦を深めることがあげられる.この場合,カラ オケの参加者同士の相互のコミュニケーションが重要である.つまり,歌い手は 自らの歌唱を聴き手に伝えるだけでなく,聴き手はその歌唱を聴き,楽しんでい ることを何らかの表現で歌い手に伝えることが重要である.これにより,歌い手 は聴き手が歌唱を楽しんでくれていることに快を感じ,聴き手にとってもカラオ ケが単に歌唱を聴く場から,歌い手とともに自己表現をする場と変えることがで きる. しかし,現状のカラオケでは必ずしもこのようになっていない.聴き手は単に 歌い手の歌唱を聴くのみで,能動的に関わろうとはしないことが少なくない.カ ラオケ店にはタンバリンやマラカスのような小道具が備えられていることが少な くないが,必ずしも十分に活用されているとは言いがたい.その理由として,タ ンバリンをどのように活用すれば良いのか分からないこと,不適切な使い方をす るとかえって歌唱の邪魔になるために躊躇してしまうことなどが挙げられる. 筆者は,こうした状況に鑑み,卒業論文において,タンバリンに Wii リモコン を組み込み,タンバリンの叩き方(タンバリン譜)を画面に表示することで,タン バリン演奏を促すシステムを提案した.このシステムにより,タンバリンを叩く きっかけを与え,特にタンバリンの叩き手が知らない楽曲に対して適切なタンバ リン演奏ができるようになり,カラオケの盛り上げに一定の貢献をすることがで きた.しかし,タンバリンと Wii リモコンをテープで留めただけであるため,使っているうちに結合部が不安定になってくるという問題(強度の問題),タンバリン の叩き手を 1 人が担うことでその人がタンバリン演奏に夢中になるため,歌い手 とのコミュニケーションにはなっていないという問題(単独演奏の問題)が生じ た.また,楽曲によってはタンバリン譜が難しく,正しく演奏できないという問 題(難度の問題)も発生した.さらに,叩き手から歌い手への働きかけがタンバ リンの音を出すことだけであり,他のモダリティを十分に活用できていないとい う問題(モダリティの問題),曲調によってはタンバリンがうるさすぎるという問 題(音量の問題)も確認された. 本研究では,まず強度の問題と単独演奏の問題に取り組んだ.強度の問題に対 しては Wii リモコンを挿入できるタンバリンを 3D プリンタで作成した.単独演奏 の問題に対しては,歌い手も含めたカラオケに参加する全員が,タンバリン演奏 に参加できるよう改良を行った.A メロや B メロと呼ばれる箇所は叩き手をロー テーションさせることとし,サビと呼ばれる箇所や間奏部は全員がタンバリン演 奏を行うようにすることで,演奏にメリハリがつくように工夫した.単独演奏条 件と全員演奏条件において本システムを使ってもらい,アンケートを取ったとこ ろ,「一体感を得られたか」「盛り上げに貢献できたか」などの項目において全員演 奏条件の回答が単独演奏条件よりも上回り,一定の効果を有していることが確認 できた. 次に,難度の問題,モダリティの問題,音量の問題に取り組んだ.難度の問題に ついては,タンバリンを演奏する目的が,あくまで楽曲を楽しんでいることを周 りに伝えてカラオケを盛り上げることであり,指定されたとおりにタンバリンを 叩くことではないことに鑑み,表示されるタンバリン譜を簡略化した.また,従 来は表示されたタンバリン譜の通りに演奏したときに「OK」という表示されてい たが,タンバリン演奏における参加度を定義し,参加度が一定の値を超えたとき に演奏者のアイコンが笑顔になるという表示がなされるようにした.モダリティ の問題に対しては,タンバリンに光る機能を追加した.タンバリンを叩いたタイミングで光る機能であるが,後述の音量制御機能と併用することで,タンバリン の音をほとんど出さずに光らせることも可能である.音量の問題に対しては,タ ンバリンに備わっているシンバルを上下から押さえつける機構を導入することで, タンバリンの音量を制御できるようにした.システムを使った 1 時間のカラオケ を 6 回行ってもらう長期実験を行ったところ,システムを長期的に使用してもカ ラオケ支援の効果が大きく下がることはなく,演奏のアドバイスにも飽きること なく長期的に効果があることが確認された.また,タンバリンの演奏を増えると, カラオケのメンバーに視線を送る回数が増えているという結果が得られ,システ ムでタンバリンの仕様を促すことでコミュニケーションが深くなっていると考え れる.しかし,光る機能と音量調整機能を加えたタンバリンは新たな強度の問題 と音量の問題により長期実験であまり使われなかった. 以上により,強度の問題,単独演奏の問題を解決することができた.難度の問 題は解決策を提案したものの,その効果は十分に検証されていない.光る機能と 音量調整機能を加えたタンバリンは実験で使われることが少なく,モダリティの 問題と音量の問題を解決するに至らなかった.